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紙の月 


角田光代原作、吉田大八監督、宮沢りえ主演「紙の月」観てきました。



原作及び原田知世主演のNHKドラマ版は未読未視聴。


非常によく出来た作品。出来すぎてる上に主役の梅沢梨花さんにかなり早い段階でシンクロしてしまったので、面白いより先にとにかく心臓が痛い(笑)



話の筋自体は要約すると銀行の契約社員の綺麗なオバサンが若い燕と不倫→横領→豪遊→破滅そして逃亡という、劇中述べられてた「行くべきところに行く」というものです。


しかし細部と役者配置が完璧。先程言った「行くべきところに行く」感をガッチリ補強しているのが、平林光太役池松壮亮さんの「誠意のなさ」感。寄る辺無き感とも言えますが、万々が一にも男の責任取りそうに無いし、旦那のところに突撃するタイプにも見えない。人当たりはいいけど絶対に自分が損を被るのは嫌な卑怯未練なタイプ。誠意が少しでもそれが見えたらまだ話が読めなくなりますが、そんな未来が見えない以上、行き着くところ=破滅が約束されてるわけです。


後はただ、終着駅に向かう主人公の人生を大いに疑似体験するのみ。これができただけでも既に満点以上出てます。



私が映画に求めるものは色々ありますが、至高なのは自分が経験できない人生の追体験です。私が恐らく今年ベストに選ぶであろうウルフ・オブ・ウォールストリートも該当しますね。



梨花さんは途中まで還す気あったみたいですが、その心情変化みたいなのもいい。冷静に考えれば石橋蓮司の最初の200万で収まりつくわけないのに、毒皿になったのはいつか、もう本人もよくわからない感じ。あのニセ証書の山を見たとき心臓に嫌な衝撃が(笑)



他の脇役も確かで、エネミー感満載で社会正義の権化のような小林聡美、梨花の心の中の悪魔を開眼させる大島優子の対比や、悪気は無いんだろうけどKYすぎる旦那の田辺誠一、行内不倫もちょっとした辻褄合わせもやる小市民代表の支店長の近藤芳正も素晴らしかった。特に大島優子、こんな顔だったんですね。可愛いし演技も抜群。興味のないアイドルグループなんてセンターでもロクに顔を見てないっていうのがよくわかりました(笑)


寄付のエピソードは見たその時にはちょっと不可解だったけど、あれこそ言いたいことだったのかな?
パッと見は「ああ、元々そういう病気の人なのね」としか思えない、そしてそれはおそらく正しい。新藤兼人監督「遠き落日」の野口英世みたいな自分の金と人の金の区別がつかない最低な輩。


多分文字に起こした理屈では擁護不可能なんだけど、金の出処が父親の財布でも、難民の子供が助かるならいいじゃないか。銀行から横領した金でも大学生が救われるし私も救われる。裁きは受けるがそれまで自転車操業であがきにあがくし、本質的には金が無くては満たされない資本主義社会そのものの病理であって私は悪くないってとこでしょうか。


そこで、社会正義代表の隅さんこと小林聡美が「どれだけ脳内シミュレーションしてもやってみたいことといえば徹夜くらいだった」という台詞を対比で言うわけです。


「貴女が行けるのはここまで」
散財の先にあるのかトレードオフなものなのかはわかりませんが、信頼と平凡な幸せを悪魔に売り渡して、その先に走り続けた梨花は、異国の地でどうなるのでしょうか。



脇役の話ばかりですが勿論宮沢りえが最高です。
あんな綺麗な四十路が存在していいのだろうか。綺麗であるが故の薄幸感もよく出ているし、前半中盤後半と、服装や時計はじめ小物は勿論、メイクや髪型にかなり気を遣った様子が伺える。特にシワとクマで今のバロメータを雄弁に現してる。


小市民的すぎてあまり言いたくないのですが、今まで生きてきて1番尊いと思うことは誰からも後ろ指差されない生活というモットーを持つくもいさんには実にピッタリな、絶対味わえない人生を高いクオリティで追体験させてくれる映画でした。



ただ、評価は高いし面白いですが、楽しめたかと言えばNO。小市民が破滅願望でもあるんじゃないかというくらい一歩ずつ、着実に、段々とスピードを上げて終わりに向かう主人公にシンクロして、楽しめるわけがない!(笑)


そう、他の人は多分もう少しシンクロ率が低い故に、もう少し楽しめると思います。
私のように、最終的に辻褄が合うならそれでいいんじゃないの?とか、隅さんタイプって正直ウザいと思ってしまう、さりながら後ろ指差されるのが怖いからやらないだけという社会的倫理感の薄さと肝の小ささを兼ね備えたクズ人間は、楽しめないと思います。



ですが、もし万一私以外にそんな方がいらっしゃりましたら、楽しくはありませんが没入して観れると思いますので、強くオススメします。

カテゴリ: DVD・CD・映画

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